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松伏の蔵 / その他の物件

設計趣旨
 その建物は、周辺には緑が多く昔の面影を残した土地に、60年前よりひっそりと佇んでいた。
古い建物を、経済性の理由や現代の使い勝手の不便さで否定するのでは無く、長年に渡り風雨にさらされて傷んだヶ所を再生し、建物の経年変化を楽しめ質素な建物になるように努めた。

 日本の現在の建物は「安く・早く・見た目」を追及するが故に、耐用年数が海外に比べ非常に短く、親から子供そして孫に建物を継承出来ず、建てては壊しの繰り返しである。
この建物はすでに60年あまり経過しているが、世代を超えて引き継がれるよう素材も当時の物を継承した。

 この建物で一番苦慮したのが壁に塗る土である。地方より取り寄せた荒木田土と建物から出た古土に藁スサを加え、発酵させた土を竹木舞の下地に、左官職人が乾燥と下地の具合を見ながら丁寧に塗った。一般的には、中塗りの上に色土の上塗りや漆喰塗りをするが、雰囲気が変わってしまう為、味わい深く風合いの残る中塗り仕上げとした。

 竣工後、初夏の季節に涼を求め訪れると、樹木、光、風の脇役として建物がひっそりと建っていた。
一歩建物に入ると土が呼吸している事を肌で感じ、凛とした空間に包まれながら回りを見てみると、建物の継承だけではなく、古き良き時代の「農機具・生活用具・調度品」を展示し、先人に感謝の気持ちを込め、愛着を持って大事に使用している事が素晴らしく、美しいと思った。

(設計 海工作舎)
物件概要

項目

詳細

建物名 松伏の蔵
所在地 埼玉県北葛飾郡松伏町
構造・規模 木造在来工法2階建
建築面積 75.27㎡
延床面積 74.52㎡
1階 37.26㎡
2階 37.26㎡
図面
1:外壁 土壁の下地となる竹小舞の施工状況。
2:外観 緑と草花に彩られ、ひっそりと建っている。
3:軒下 懐の深い軒下の土間空間。建物に愛着を持って大切に使用してるのを感じさせられる。
4:外壁 開口部廻りの造作は、反対側にある既存の開口部と同じディテール。
5:板壁 板壁のディテール。土壁と板壁の水切りは銅板を加工した物。杉板の上に36㎜幅の押し縁を打ち、天然塗料である柿渋を塗っている。
6:土壁 土壁のディテール。藁スサが入っている味わい深い中塗り壁。
7:内観 小屋梁を支持する牛梁が建物を貫いている。
8:開口部 建具は杉材で製作し、レールは真鍮製の甲丸レール。
9:内観 夕方の内観。古き良き時代の「農機具・生活用品・調度品」が空間を豊かにしている。
10:内観 力桁と45㎜の段板の最小限の部材で構成された、階段を見下ろす。